水道法とは?世界的に高水準な日本の水道水はこう守られている!
1957年に成立した「水道法」ですが、2018年に「水道民営化」導入のため改正されました。
水道法とは具体的にどのようなもので、なぜ水道民営化のために改正されたのでしょうか。
今回は水道法についてご説明いたします。
水道の始まり
世界で最初に水道が作られたのはローマで、今からおよそ2300年も前のことになります。
日本では室町時代後期(戦国時代)、1541〜1545年ごろに北条氏康により小田原城城下町に作られたのが最古の記録です。
水道事業の始まり
日本の水道事業は1887年(明治20)10月17日にイギリス人技師ヘンリー・スペンサー・パーマーの指導により、横浜で施設された近代水道が最初です。
近代水道とは、川などから水を取り入れ、濾過をし有圧のまま給水する水道を指し、現代で使われている水道の仕組みと同じものになります。
その後、長崎、函館でも整備され、そして1890年に「水道条例」が制定されます。
水道法の成立
水道法は1957年に第一次岸内閣のもとで成立しました。
「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与すること」を目的としており、これは日本国憲法第25条の生存権に由来しています。
水道法の最終改正は2019年(令和元年)6月14日で、第1章から第9章までと附則で構成されています。
第1章 総則
この章では以下の項目について書かれています。
・この法律の目的
・責務
・用語の定義
・水質基準
・施設基準
この章で特に重要なのが「水質基準」についてです。
意外なことに世界で水道水がそのまま飲める国は日本を含め9カ国しかありません。(2018年国土交通省発表)
そして水道水が安全できれいな国として、日本はアイスランド、オーストラリアに次いで世界で3位なのです。
日本のきれいな水道水は、以下の「水質基準 6項目」にて生み出されています。
①病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むものでないこと。
②シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。
③銅、鉄、 弗素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。
④異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。
⑤異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。
⑥外観は、ほとんど無色透明であること。
第2章 水道の基盤の強化
この章では以下の項目について書かれています。
・基本方針
・水道基盤強化計画
・広域的連携等推進協議会
基本方針は厚生労働大臣が定め、変更した時には遅滞なく、これを公表しなくてはならないということが書かれています。
水道基盤強化計画は、水道の基盤の強化が必要であると認められたときに、各都道府県に定める権利があります。
広域的連携等推進協議会は、使用村の区域を超えた広域的な水道事業者等の間の連携などの推進に関し必要な協議を行うため、当該都道府県が定める区域において組織することができます。
第3章 水道事業
この章では第1節から第4節に分けて水道事業についてこと細やかに定められています。
・第1節 事業の認可等
認可の申請方法や認可基準などについて詳しく書かれています。
・第2節 業務
料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件についての供給規定を定めなくてはならないことや、給水義務、給水装置について、検査や管理についてなどが書かれています。
・第3節 指定給水装置工事事業者
指定給水装置工事事業者の認定を受けるための申請や基準、試験などについて書かれています。
・第4節 指定試験機関
指定試験期間の運営などについて書かれています。
第4章 水道用水供給事業
「水道用水供給事業」とは、水道の契約者に水を供給している自治体などが経営している水道事業体に、水道水を送る事業です。
いわゆる水道水の卸売を行っている事業です。
この章では水道用水供給事業の認可、申請、認可基準等について書かれています。
第5章 専用水道
「専用水道」とは、寄宿舎、社宅、療養所等における自家用の水道その他水道事業の用に供する水道以外の水道であって、次のいずれかに該当するものをいいます。(一部例外あり)
・100人を超える者にその居住に必要な水を供給するもの
・その水道施設において、人の飲用、炊事用、浴用その他人の生活の用に供する1日最大給水量(1日に給水することができる最大の水量をいう。)が20立方メートルを超えるもの
この章では、専用水道の申請、工事等について書かれています。
第6章 簡易専用水道
「簡易専用水道」とは、水道水を水源とし、有効容量の合計が10立方メートルを越える受水槽を使用し飲用等の目的で水を供給する貯水槽水道です。
ただし、井戸水等を混合するもの、専用水道に該当するものを除きます。
この章では、簡易専用水道の管理、検査等について書かれています。
第7章 監督
この章では、水道工事の着手、完了が規定通りに行われていない場合の処分等について書かれています。
水道事業者又は水道用水供給事業者の水道工事については以下の通り取り決められています。
・事業認可の申請書に添附した工事設計書に記載した工事着手の予定年月日の経過後1年以内に工事に着手しなくてはならない
・工事完了の予定年月日の経過後1年以内に工事を完了しなくてはならない
・事業計画書に記載した給水開始の予定年月日の経過後1年以内に給水を開始しなくてはならない
これらが守られなかった場合の処分などについて書かれています。
第8章 雑則
この章では、災害時の対応についてや、事業経営の合理化、水道事業の権利の買収など、第1章から第7章までの項目に含まれない項目について総合的に書かれています。
第9章 罰則
この章では、水道施設の損壊行為、妨害行為、無認可で水道事業を経営した場合の処罰、その他の違反行為に対する処罰などについて書かれています。
水道民営化とは?
これまでは水道の管轄は市区町村単位で進められていました。
しかし、近年全国的に以下の問題が表面化してきたのです。
・水道の老朽化
・耐震化が遅れている
・人口減少による自治体の脆弱化
・水道事業者の資金問題
「これらの4つの問題を解決し、安全に水の供給を続けるために水道の基盤を強化する必要がある。」と厚生労働省は声明を発表しています。
そこで水道民営化の流れが生まれたのです。
水道民営化についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。
まとめ:水道法とは?世界的に高水準な日本の水道水はこう守られている!
水道法について説明いたしました。
日本の水道水の水質が世界的に高水準にあるのは、水道法で定められている水質基準や、厳格な水道事業の取締規則によるものが大きいです。
しかし、前段で述べた大きく4つの問題により、水道事業の今後の継続が危険視されています。
それにより、水道民営化ための法改正が行わレました。
水道水の品質は私たちの生活に大きな影響を及ぼします。
安定した生活のためにも、一人一人が節水などを心がけ、水道事業に対して関心を持つことが必要です。
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