また冬場・夏場など冷暖房を使用するシーズンには停電回避のために「節電のお願い」が呼びかけられているように、電力不足も大きな問題となっていますね。
そこで話題になるのが「原子力発電所の再稼働」です。「電子力発電所が再稼働すれば、電力供給が安定し、電気代が安くなる」といった意見も聞かれます。
実際、全国の原子力発電所が再稼働すれば、電気代は安くなるのでしょうか。
結論から言いますと、原子力発電所が再稼働しても、すぐに電気代が安くなることはないと考えられます。
この記事では「原子力発電所が再稼働しても電気代が安くならない理由」や「電気代を安くするための方法」を紹介します。高くなった電気代に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
原子力発電再稼働のメリット・デメリット
まずは原子力発電や原発再稼働のメリット・デメリットを整理してみましょう。
原子力発電のメリット
原子力発電のメリットは以下のとおりです。
- 燃料費のコストが安い
- 発電時に二酸化炭素を排出しない
- 燃料供給が安定している
順番に説明します。
燃料費のコストが安い
原子力発電は水力発電や火力発電に比べて燃料費のコストが安いのが大きな特徴です。発電に必要な燃料(ウランやプルトニウム)が少量で済み、効率よく電気を生み出せるからですね。
維持費などを含めると石炭火力発電などとの差は縮まりますが、全体的な発電コストも比較的安くなっています。
経済産業省の発電コスト検証ワーキンググループの資料をもとに、2020年の電源別発電コスト試算を紹介します。
発電の種類 | 発電コスト |
石炭火力発電 | 12.5円/kWh |
石油火力発電 | 26.7円/kWh |
LNG(液化天然ガス)火力発電 | 10.7円/kWh |
陸上風力発電 | 19.8円/kWh |
洋上風力発電 | 30.0円/kWh |
地熱発電 | 16.7円/kWh |
バイオマス発電 | 13.2円/kWh |
太陽光発電(事業用) | 12.9円/kWh |
太陽光発電(住宅用) | 17.7円/kWh |
原子力発電 | 11.5~円/kWh |
※政策経費、社会的費用、燃料費、運転維持費、資本費含む
燃料費以外のコストを含めても、原子力発電のコストは安いほうだとわかりますね。
ただ経済産業省が発表した試算では、「2030年時点では、事業用太陽光発電のほうが原子力発電よりも発電コストが安くなる」とされています。つまり今後自然エネルギー発電関連の研究開発が進めば、原発の発電コストの価格優位性は低くなる可能性もあります。
二酸化炭素を排出しない
原子力発電のメリットとしては、発電の際に二酸化炭素(CO2)を排出しないことも挙げられます。また運ぶ燃料が少ないため「燃料輸送時の環境負荷も少ない」と言われています。
一方火力発電所は、石油・石炭・LNG(液化天然ガス)などを燃やして発電するため、二酸化炭素を排出します。
燃料供給が安定している
原子力発電は燃料供給が安定しているのもメリットです。
原子力発電の燃料となる「ウラン」は、オーストラリアやカナダから輸入されています。オーストラリアやカナダは比較的政情が安定しています。性情が安定している国が供給源となっていることから、価格の乱高下が少なく、安定的に供給を受けられます。
一方主要な産油国である中東などでは、紛争・政情不安が起こりやすく、政情が石油価格に影響することもあります。
またウランは再処理することで繰り返し燃料として利用できます。これは資源の少ない日本にとってはメリットです。
原子力発電のデメリット
もちろん原子力発電にはデメリットもあります。
- 事故が起きたときの被害が大きくなりやすい
- 発電により高レベル放射性廃棄物ができる
- 廃炉に高額の費用・長い時間がかかる
順番に説明します。
事故が起きたときの被害が大きい
チェルノブイリや福島第一原発の事故からもわかるように、原子力発電所で事故が起きたときのダメージは甚大です。
ひとたび事故が発生すれば、大気・土壌・海が汚染され、「避難を余儀なくされる」「故郷になかなか帰還できない」など周辺住民の生活にも大きな影響を及ぼします。除染や賠償金にも莫大な費用がかかります。
つまり発電にかかるコストは安い一方、事故が起きた場合の被害やコストは莫大なのがデメリットです。例えば福島第一原発の事故では、事故から10年間だけで13兆円もの処理費用がかかっていて、トータルのコストは今後さらに増えると見込まれています。
高レベル放射性廃棄物ができる
先ほど「原子力発電に利用した燃料は再利用できる」と説明しました。しかし100%再利用できるわけではありません。
実は一度利用した燃料から再利用できるウランやプルトニウムを回収した後には、再利用できない「放射能レベルの高い廃液」が残ります。廃液をガラス原料と混ぜて固めたものを「高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)」と呼んでいます。
高レベル放射性廃棄物は30~50年間冷却したあとに地層処分されますが、人体に影響のない状態になるまでには、数万年以上かかると言われています。このように放射能レベルの高い廃棄物ができてしまうのも、原子力発電のデメリットです。
廃炉に高額の費用と長い時間がかかる
原子力発電所は廃炉や解体にも大きなコストがかかります。同規模の火力発電所の解体と比べると、10倍程度のコストがかかると言われています。
もちろんコストだけではなく時間も必要です。例えば佐賀県にある九州電力玄海原発2号機の場合、廃炉まで35年かかり、費用は365億円を見込んでいます。
原発が再稼動しても電気代は安くならない
「原子力発電が再稼働したら、電力の供給力が高まるので、電気代も下がるのでは」と考えている人は多いのではないでしょうか。そのため原発再稼働の前倒しを求める声もありますね。
しかし実際には、原発が再稼動してもすぐに電気代は安くなりません。その理由を紹介します。
原発再稼動でも電気代が安くならない理由
原子力発電所が再稼働しても、電気代はすぐには安くならないと考えられます。その理由は、東京電力以外で原子力発電所をもっている電力会社では、原発稼働を前提にして電気料金を算出しているからです。
つまり原発再稼働は電力会社にとっては「無理していた分が、稼働してようやく元に戻る」という状態を意味します。余裕ができるわけではないので、即値下げにはつながらないと考えられています。
ただ電力供給力の回復には効果があるでしょう。
電気代を安くする方法とは
原発が再稼働しても、即電気代の値下げにはつながりにくいと考えられています。では家庭や企業が支払っている電気代を下げるためには、どうしたらいいのでしょうか。
とれる対策を紹介します。
- 節電を心がける
- 電気の契約アンペア数を見直す
- 電気代の支払い方法を見直す
- 太陽光などで自家発電する
- 電力会社を乗り換える
節電を心がける
電気代を安くしたいとき、まず節電を心がける人は多いでしょう。節電方法には以下のようなものがあります。
- 省エネタイプの家電に買い替える
- エアコンはオンオフを繰り返さない
- エアコンの設定温度を変える
- テレビの明るさを落とす
- 冷蔵庫に食材を詰め込みすぎない
- 炊飯器で長時間保温しない
- パソコンのスリープモードを活用する
- タオルドライなどでドライヤーの利用時間を短縮
上記のようにできるだけ無駄な電気を使わない工夫が必要です。
冷暖房については、感染対策をしっかり行いながら、クールシェア・ウォームシェアできる場所を利用するのもいいですね。
電気の契約アンペア数を見直す
アンペア制の電気料金プランの場合、電気の契約アンペア数を見直す方法もあります。アンペア数とは、同時に使える電気量のことです。「10A」「30A」などの数字で表されます。
契約アンペア数を下げれば、電気代の中の基本料金を低くできて無駄なコストを減らせます。一人暮らし・二人暮らしなどで一度に利用する電気量が少ない場合には、契約アンペア数を低くできないか検討してみましょう。
適正なアンペア数を調べる際には、1年・1日の中で一番電気を使う状況を想定して計算してください。
現在のアンペア数は、電力会社のマイページや請求書などで確認できます。アンペア数の変更は、利用中の電力会社に申し込みます。
ただ中にはアンペア制ではない電力会社(関西電力など)もありますので注意してください。
電気代の支払い方法を見直す
電気代の支払い方法を見直すことで、節約につながる可能性もあります。口座振替の利用で割引されるケースがあったり、クレジットカード払いでポイントを貯められたりするからです。
節約効果はあまり大きくありませんが、「電力会社を変更しない場合」「電気代を振込票で支払っている場合」には、ぜひ試してみてください。
太陽光などで自家発電する
太陽光発電などで自家発電すれば、電力会社から購入する電気の量が減るため、節約につながります。「災害などで停電した時でも電気が使えるから」という理由で太陽光発電システムを導入される方もいますね。
ただ太陽光発電には太陽光発電パネルなどの設備が必要です。昼間発電した電気を夜間に使いたい場合には、蓄電池も導入することになります。
発電量など装置のスペックにより費用は異なりますが、いずれにしてもある程度の初期費用がかかるため、一時的には出費が増えてしまいます。そのため「今すぐ節約したい」という方には向いていません。
また「天候によって発電量にムラがある」「メンテナンスが必要」といったデメリットもあります。
自家発電は「長い目で見て節約につなげたい」「自然エネルギーを利用したい」という方におすすめです。
電力会社を乗り換える
「すでに節電を心がけているが、なかなか節約効果が出ない」「アンペア数を変えられない」「太陽光発電パネルの設置には大きな費用がかかるので難しい」という方もいるでしょう。
そのような場合は、電力会社を乗り換えるのもおすすめです。ライフスタイルや電気の使用量に合わせた電力会社や料金プランを選べば、電気代が下がる可能性があるからですね。
料金プランは電力会社によってかなり変わるので、電力会社を変えることで節約につながる可能性は高いです。例えば基本料金や単価が安い会社と契約すれば、これまでと同じ家電で同じ電気の使い方をしても、電気代は下がります。
また電気とガスを同じ会社で契約することで割引が受けられる会社もあり、電気代だけではなく家庭全体の光熱費を下げられる可能性もあります。
電気代が安くなる電力会社の選び方
電力会社を乗り換えれば、原発再稼働の有無に関わらず電気代が下がる可能性があります。では乗り換え先の電力会社は、どうやって選べばいいのでしょうか。
「電力会社選びのポイント」と「電力会社の探し方」を紹介します。
- 比較サイトで探す
- 電力会社に詳しいプロに探してもらう
電力会社選びのポイント
乗り換え先の電力会社を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。
- 料金プランと使用電力量がマッチしているか
- キャンペーンの有無
- 発電方法
まずは電力会社が提供する料金プランと家庭・会社での使用電力量がマッチしているかが大切です。
「一人暮らしで少ししか電気を使わない世帯」なのか「家族が多く電力使用量が多い世帯」なのかで、向いているプランが違うからですね。また昼間は家に誰もいない世帯なら「夜間の電気代や安いプラン」を選ぶなどの工夫も可能です。
なおJEPX(日本卸電力取引所)での電力の取引価格に連動した料金プランの場合、JEPXの取引価格が高騰すると電気代が跳ね上がります。取引価格が高くなっている現状(2022年8月現在)では、自家発電と併用するのでない限り、電気代が上がるリスクが高いのでおすすめしません。
また電力会社によっては「契約すると基本使用料を○ヶ月間無料にします」「契約月の○ヶ月後に商品券をプレゼントします」などのキャンペーンを実施していることがあります。
キャンペーンだけで選ぶとキャンペーン適用期間が終わった後のトータルコストが高くなってしまう可能性がありますが、「同条件の電力会社が複数あり、キャンペーン有無が違う」などであれば、キャンペーンがある電力会社を選ぶとオトクになるでしょう。
「原発で発電した電気は使いたくない」「自然エネルギーを利用したい」などの理由で、各電力会社が調達している電力の発電方法(電源)に注目する人もいます。
電力会社の探し方1:比較サイトで探す
電力会社を乗り換えたい場合には、まずは電力会社の比較サイトで探す人が多いのではないでしょうか。ひとつのサイトで多くの電力会社が比較できるので便利ですよね。
比較サイトによっては、これまでの電気代を入力することで、節約できる金額の目安が簡単に計算できるものもあります。
ただ詳細をチェックしようと思うと、それぞれの電力会社の公式サイトを閲覧したりする必要があります。キャンペーンなどは適用期間・適用条件が細かく決まっていることもあるからですね。
また「電力会社や料金プランが多すぎて比較しにくい」という人もいるでしょう。
電力会社の探し方2:プロに探してもらう
自分で電力会社を探すのが難しい場合には、電力会社に詳しいプロに探してもらうのがおすすめです。電気使用量などを伝えれば、電気代が安くなる可能性が高い電力会社を提案してもらえるからですね。
自分で比較検討する必要がないので、時短になり効率的ですよ。気になる方はぜひ以下の窓口の詳細をチェックしてみてください。
窓口は無料で利用できます。なお電力価格高騰のため、2022年8月時点で新規契約申し込みの受付を停止している電力会社もあります。そのため電力会社の乗り換えを検討しているなら、早めの行動をおすすめします。
まとめ:原発再稼働でも電気代は安くならない!電力会社乗り換えを検討しよう
「現在停止している原子力発電所が再稼働しても、電気代はすぐには安くならない」という見込みについてお伝えしました。
そのため電気代を安くしたいのであれば、原発再稼働を待つのではなく「節電」「自家発電システムの導入」などの行動をとるべきです。
ただ太陽光発電システムの導入や省エネ家電の購入にはまとまった初期費用がかかります。また「節電に取り組んでいるけれど、効果があまりない」「すでに頑張っているから、これ以上の節電なんて無理」という方もいるでしょう。
そこでおすすめなのが「電力会社の乗り換え」です。電力会社によって料金プランがかなり違うので、電気使用量やライフスタイルに合う電力会社に乗り換えれば、電気代が安くなる可能性があるからです。
電力会社は比較サイトでも探せますが、プロに選んでもらいたいなら以下の窓口がおすすめ。無料で利用できるので、電力会社を乗り換えたい方は早めに相談してみてください。