退去手続きの方法は物件や管理会社によりさまざまですが、まず電話連絡した後に「退去届(解約通知書)」を提出するのが一般的です。
「退去届はどうやって書いて、いつまでにどこに提出すればいいの?」「賃貸からの引越しは初めてだから、何もわからない」と疑問に思っている方も多いでしょう。
そのような方向けに「退去届の書き方や提出期限」「退去時の流れや必要な手続き」についてまとめて解説します。
退去届(解約通知書)とは?
退去届(解約通知書)とは、借主が賃貸物件を退去する時に、大家さんまたは管理会社に提出する書類です。
簡単に言うと「大家さん・管理会社に退去する旨を申し出る書類」ですね。
「解約届」と呼ばれることもありますし、URだと「賃貸住宅賃貸借契約解除届(解除届)」と呼ばれます。
退去届は契約書類の中に入っている
退去届は入居時に受け取った契約書類(賃貸借契約書)の中に含まれているケースが多いです。
そのため引越しが決まったら、まず契約書類をチェックしてください。
書類が見つからないときは大家さん・管理会社に連絡
契約書類の中に退去届が見つからないときや、契約書類そのものを紛失してしまったときは、大家さんや管理会社に連絡してください。
「ダイワリビング(D-room)」「日商管理サービス」など、公式サイト・入居者専用サイトから退去届のテンプレートをダウンロードできる管理会社もあります。
退去届を提出しないと退去できないの?
退去届の提出なしで退去可能な賃貸物件もあります。
退去届は法的に提出が義務付けられているわけではないからです。
ただ退去届が必要なくても、退去通知の内容が記録に残る方法で連絡することをおすすめします。
理由を詳しく説明します。
退去届が必要ない場合の連絡方法は?
退去届が不要な場合でも、何らかの方法で大家さんや管理会社に退去する旨を伝える必要はあります。
大家さんや管理会社によりますが、退去届が必要ない場合の連絡方法は「電話・口頭」や「入居者専用サイトからの連絡」です。
例えば大東建託やエイブル保証ですと、インターネットから解約の申し込みができます。
退去届が必要なくても書面で通知するのがおすすめ
稀なケースですが、退去届が必要なく「電話連絡だけでいい」と言われることもあります。
しかしこの場合も、書面など記録が残る方法で退去を通知しておくのがおすすめです。
口頭だけでの連絡では「言い間違い」「聞き間違い」などの問題が起きる可能性があるからですね。
特に退去日について行き違いがあると大きなトラブルになりかねません。
「万が一の行き違いをなくしたいので、書面でもお送りしてよいでしょうか」と一言伝えた上で書面を送りましょう。
具体的な文例については、後ほど紹介する退去届の書き方を参考にしてください。
退去届はいつまでに提出するの?
退去届の提出期限は、賃貸物件により異なります。ただ一般的には「1ヶ月前まで(30日前まで)」とされている物件が多いです。
「1ヶ月も前に提出しないといけないの?早いなあ」と思うかもしれません。
しかし大家さんや管理会社にとっては、退去通知があってから部屋を修繕したり次の入所者の募集を行ったりするための時間が必要なのです。
退去届の提出期限には、意味があるのですね。
提出期限は契約書で必ず確認を
物件ごとの退去届の提出期限は賃貸借契約書に記載されていますので、必ず確認してください。
管理会社が同じでも、マンション・アパートによって提出期限が違うことはよくあります。
一般的に退去届の提出期限は1ヶ月前までですが、中には「2ヶ月前」という物件も。
人気物件は退去通知期限が早め(2ヶ月、3ヶ月など)に設定されていることも多いですね。
ちなみに店舗・テナントの退去では、3~6ヶ月前までに退去通知するのが一般的です。
退去届の提出が遅れたらどうなるの?
退去届の提出が遅れて期限を超えてしまうと、住んでいない期間の家賃も支払うよう求められてしまいます。
退去届提出が遅くなったせいで、解約日が後ろにズレてしまうからです。
例えば1ヶ月前までに退去届を提出しなければいけない物件で、3月15日に解約通知書を提出した場合を考えてみます。
この場合、解約日は4月15日以降になります。そのため実際には3月末に引っ越すつもりでも、4月15日までの家賃は支払う必要があるのです。
退去届はいつから出していいの?
退去届をいつから出していいかは、特に決まっていません。退去を決めたら提出しましょう。
ただし転居先が決まってから提出することをおすすめします。
転居先が決まっていない状態で退去届を出してしまうと、退去日までに新居が見つからず家がなくなる可能性があるからです。
退去届の内容と具体的な書き方
退去届に記入する内容は、大家さんや管理会社により異なります。
退去届の書式が手元にある場合には、フォーマットを埋めていけばOKです。
この章では一般的に退去届に記載される項目を紹介します。
「退去届や解約通知書のテンプレートがない」「退去届を自分で作らないといけない」といった場合の参考にしてください。
退去届に記載する内容
退去届には、一般的に以下のような項目を記入します。
記載項目 | 具体的な内容 |
物件についての情報 | ・住所 ・物件名 ・部屋番号 |
契約者についての情報 | ・氏名 ・電話番号 |
提出日 | 退去届を提出する日 |
解約日 | 解約日(退去予定日) |
退去理由 | (例)転勤、結婚、出産、物件への不満など |
転居先についての情報 | ・住所 ・電話番号 |
敷金などが返金される場合の振込先 | ・銀行名 ・口座の種類 ・口座番号 ・口座名義 |
退去理由に何を書いたらいいか悩む方も多いですが、差し支えのない範囲で何を書いても大丈夫です。
退去理由の記入はアンケートのようなものなので、「退去理由によって退去が却下される」といったことはないでしょう。
「なんとなく飽きたので新しい部屋に移りたい」「気分転換のため」という理由なら、「他によい部屋が見つかったため」などと書きます。
具体的な書き方は?
書類の件名は「解約通知書」または「退去届」とします。
件名の下に「下記の通り賃貸借契約を解約することを通知いたします。」と書き、その後は上記で紹介した項目を順番に羅列していけばOKです。
時候の挨拶はあってもなくても構いませんが、あれば丁寧な印象になります。
「ミニミニ」の公式サイトなど、インターネット上で退去届のテンプレートが公開されているので、参考にしてみましょう。
なお退去届には印鑑を押すのが一般的ですが、シヤチハタは時間が経つと消えてしまうため不可です。朱肉を使って押印してください。
管理会社から指定がない限り、契約書と退去届の印鑑を同じものにする必要はありません。
退去届提出から退去までの流れ
実際に退去するまでの流れや必要な手続きについて、順を追って紹介します。
賃貸借契約書を確認
まずは契約書で、退去通知の方法や期限を確認しましょう。
同時に以下の点についてもチェックしておくことをおすすめします。
- 敷金の返金方法
- 最終月の家賃の計算方法
住まいとは別に駐車場を借りている場合は、駐車場の契約書も同様に確認しておいてください。
退去通知と立ち会い日の調整
大家さんや管理会社に対し、電話等で退去の連絡をします。
この時、念のため以下の点を確認しておくと安心です。
- 退去届の提出は必要か
- 退去届が必要な場合、いつまでに提出すればいいか
- 提出方法は郵送のみか、FAXでもいいのか
また退去届が必要なのに手元に書式がない場合には、送付してもらうよう依頼するか、独自の書式でもよいのか確認します。
大家さんや管理会社が書式を持っているなら、書き漏らす項目がないように書式を送付してもらうほうが安心ですね。
なお賃貸物件からの退去時には「退去立ち会い」が必要なので、立ち会いの日程も調整します。
退去立ち会いは、引越し当日の荷物を運び出した後に行うのが一般的。転居先が近隣など旧居に戻りやすいケースなら、引越し日より後の別日に設定してもいいでしょう。
退去の連絡をする時点で正確な引越し日が決まっていない場合には、「退去立ち会い日の希望を伝える期限」を聞いておき、後日別途連絡します。
引越し会社を手配する
退去日が決まったら、引越し会社を手配します。
できるだけ料金を安くしたいなら、複数社に見積もり依頼しましょう。
簡単に複数の引越し会社に見積もり依頼ができる「引越し業者の比較サイト」もあります。「複数の引越し業者から電話連絡があっても苦にならない」という人にはおすすめです。
なお繁忙期(3~4月)ですと、希望日時に引越し業者の予約がとれないケースも多々あります。
具体的には「土日は空きがない」「夜遅い時間しか空いていない」「搬出と搬入が別日になってしまう」などですね。
繁忙期に希望日時をおさえるなら、早めの連絡がマストです。
各種手続きを済ませる
賃貸物件からの退去・引越し時には、さまざまなサービスの「住所変更手続き」が必要となります。
主なものでは、以下のような手続きがあります。
- 電力会社・ガス会社・水道局の転居手続き
- 電話・インターネットの転居手続き
- 銀行・クレジットカードなどの住所変更手続き
- 住民票の移動(転出・転入または転居手続き)
- 郵便物の転送
住民票の手続きは市役所で行いますが、それ以外の手続きはインターネットや電話でも手続き可能です。
また幼稚園や学校に通うお子さんがいるご家庭では「転園・転校の手続き」なども必要になります。
部屋の掃除・荷造り
各種手続きと並行して、退去日に向けて「荷造り」「部屋の掃除」「生活用品の処分」を行います。
荷造りの進め方のコツ
荷造りの進め方のコツは、「季節外れの衣類などからダンボールにつめること」です。
日常で使っている日用品をしまうのが早すぎると、まだ旧居で使いたいのに使えない状態になってしまうからです。使用頻度が低いものから荷造りしていきましょう。
また最近は「荷造りしやすい梱包材」をウリにしている引越し業者もあります。上手に利用すれば、荷造りや荷解きの手間をかなり減らせます。
部屋の掃除は普段どおりでOK
部屋の掃除については、ハウスクリーニングほど本格的に行う必要はありません。通常の掃除程度で大丈夫です。
ただ退去立ち会いの時にカビなどが目立つと費用を請求されることもあるので、特に水回りは注意してきれいにしておきましょう。
生活用品の処分は「粗大ごみ回収」か「売る」
家電など生活用品の処分については「自治体に粗大ゴミとして回収してもらう」「フリマアプリやリサイクルショップで売る」などの方法があります。
粗大ゴミ回収は予約が必要なので、処分する生活用品が決まったら、引越し日に間に合うように予約しておきましょう。
フリマアプリでは「すぐに売れる」というわけではないので、不要なものは早めに出品しておくのがおすすめです。
引越し作業・退去立ち会い
引越し当日は、引越し会社に荷物を搬出してもらいます。引越し会社のプランによっては、梱包も依頼できます。
荷物の運び出しと並行して、家具・家電がなくなった部屋からフローリングモップや水拭きなどで掃除しておきましょう。家具がなくなると、隠れたホコリなどが出てくるはずです。
搬出が終わって部屋の中が空になったら、退去立ち会いが行われます。
退去立い会いではキズや汚れなどの状態を確認し、補修費用を決定します。
「入居当初からあったキズかどうか」などの確認を求められますので、正直に答えてください。
退去立会いの所要時間は30分ほどで、最後に鍵を返却して退去完了です。
忘れがちな手続きに注意!
引越しに向けた準備の中で、忘れがちなのがライフライン(電気・ガス・水道)の転居手続きです。
管理会社への連絡や引越し業者とのやりとり、荷造りなどが忙しくて、ついついライフラインは後回しになったり、手続きが漏れてしまったりするのですね。
ライフラインの手続きを忘れたまま引越してしまうと、余計な光熱費がかかることもあります。
またガスについては特に注意が必要。
オートロックマンションの場合など、退去にあたってガス閉栓作業への立ち会いが必要になるケースもあるからです。
手続きが遅くなると「引越し当日にガスの閉栓に来てもらえない」などの失敗に繋がりかねません。
ですから退去日が決まったら、電気・ガス・水道の引越し連絡を早めに行いましょう。
具体的には、遅くても5日前までに連絡しておくと安心。繁忙期(3~4月)であれば1週間程度は余裕をみておくのがおすすめです。
「電気・ガス・水道それぞれに連絡するのは面倒」「なかなか窓口に電話が繋がらない」などの場合には、以下のような「退去手続きの一括代行サービス」を利用するのが時短でおすすめです。
退去を決めたら契約書の確認と大家さん・管理会社への連絡
退去を決めたら、まずは契約書を確認しましょう。
契約書で確認するのは、退去届の提出期限と提出先です。退去届が契約書に添付されているかもチェックしてください。
退去通知の期限については「退去の1ヶ月前までに通知してください」と決められている賃貸物件が一般的です。
ただ「2ヶ月前まで」という物件もありますので、「1ヶ月前だろう」と思い込まないで、必ず契約書を確認してください。
期限と提出先を確認したら、期限までに退去届を提出します。退去届が大家さんや管理会社に到着した日が「退去の通知日」となります。
退去届の提出が遅れると家賃を余分に支払うことになるので、遅れたり忘れたりしないように余裕をもって連絡してくださいね。
まとめ
賃貸物件を退去するときには、一般的に退去届(解約通知書)の提出が必要です。
退去届は賃貸物件を退去する旨を大家さんや管理会社に知らせる書類で、「物件情報」「契約者情報」「退去予定日」「退去理由」「退去後の連絡先」などを記載します。
「退去届は退去日の1ヶ月以上前までに提出」と決まっている物件が多いですが、中には2ヶ月前までに提出すべき物件もあるので、契約書で確認してください。
退去届の書式は契約書に添付されていることもありますし、退去連絡の電話をしたあとに管理会社から郵送されてくることもあります。
なお退去にあたっては退去連絡や退去届の提出の他にも、やるべき手続きが多くあります。
中でも忘れやすいのはライフライン(電気・ガス・水道)の引越し手続きです。
ライフラインの手続きを忘れていると、「退去後も余計な光熱費がかかってしまう」といった失敗に繋がるので、早めに手続きしましょう。
煩雑なライフラインの引越し手続きをまとめて代行してくれる窓口を利用すれば、時短かつ少ない手間で手続きを終えられて便利です。