「大変そう」とは思うものの、具体的に何から手をつけていいかわからず困っている方も多いのではないでしょうか。
結論から言いますと、独立開業の際には、まず事業や資金の計画を立てます。次に官公庁などでの各種手続きを済ませ、オフィスや店舗に必要な備品・設備を揃えます。
この記事では開業準備の具体的な中身について、項目を分けて詳しく紹介します。
最後まで読んでいただければ、開業準備の段取りがわかり、「大変そう」「できるのかな」と思っていた開業準備に対して前向きになれるはずです。
開業準備やることリスト
この章では開業準備を「計画」「各種手続き」「備品・設備の準備」の3ジャンルに分けてまとめました。
計画を立てる
開業にあたっては計画性が大切です。事業計画立案に向けてのステップは以下のとおりです。
- コンセプト決定
- 商圏調査
- 物件選定
- 事業計画書作成
順に説明していきます。
コンセプトを決める
「カフェ」「喫茶店」「キッチンカー」「エステ」「美容室」などの業態が決まったら、事業コンセプトを決めます。
例えば「カフェ」といっても、店舗の雰囲気もメニューもさまざまです。美容室やエステの場合も、店舗により「ターゲットの性別・年齢層・目的」は違います。
そのためコンセプトが明確でないと、「物件選び」「サービス開発」「価格設定」「販促戦略」などの軸が定まらず、事業計画書の準備も進みません。
コンセプト決定にあたっては、以下のことを考えます。
- 誰に
- 何のサービスを
- どれくらいの価格帯で
- どこで
- どのような方法で提供するのか
インターネット上で公開されている「開業準備のためのコンセプトシート」を活用してみるのもいいですね。
商圏調査を実施
商圏調査も開業準備として重要です。具体的には以下のようなことを調査します。
- 出店希望エリア・営業時間帯にターゲット層がどれくらいいるか
- どんな交通手段の人が、どのくらい遠いところから来れそうか
- 周辺にある競合店舗の数・経営状況
自分で現地に足を運んで調べてもいいですし、調査会社にリサーチを依頼してもOK。しっかり商圏調査すると、融資の審査などで有利になりやすいです。
店舗物件を選定
実店舗を構えるなら、物件選びが必須ですね。「開業までにかかる期間は、いい物件がすぐ見つかるかにかかっている」という人もいます。
「喫茶店」「エステ」「美容室」など、お客さんが店舗に来るタイプの業種ですと、店舗の立地が売上に直結しますので、慎重に選びましょう。
なお店舗・オフィス物件には以下の2タイプがあります。
- 居抜き:前の店舗・オフィスの設備がそのまま残されている
- スケルトン:設備が撤去されている
喫茶店・カフェや美容室の居抜き物件だと、設備がそのまま使えて初期費用が抑えられます。
事業計画書を作成する
事業計画書の作成も重要です。事業計画書は以下のような内容をまとめたものです。
- 事業の特徴・強み
- 競合・市場環境
- マーケティング戦略
- 売上・利益の見通し
事業計画書を作成する主な理由は「融資を受けるため」。また事業計画書を作成することで、取引先や従業員に事業について明確に説明できます。
事業契約書に決まったテンプレートはありません。テンプレートやサンプルはインターネットでも数多く公開されていますので、書き方に迷ったら参考にしてみましょう。
官公庁等での各種申請手続き
開業にあたっては官公庁等での手続きも必要です。
- 開業届・法人設立届等の提出
- 各種許認可の申請手続き
- 法人口座・クレジットカードの取得
法人口座・クレジットカードの取得は必須ではありませんが、取得しておくことをおすすめします。順番に解説します。
開業届・法人設立届等の提出
開業する場合、「個人事業主として開業」「法人を設立」の2つの方法があります。
まず個人事業主として開業し、のちのち法人化する方も多いですね。個人事業主として開業するほうが手続きが簡単だからです。
個人事業主として開業する場合、納税地の税務署に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。また都道府県税事務所にも「個人事業開始申告書」の提出が必要です。
開業届未提出でも罰則はないので、開業届を出さないままフリーランスのライターやカウンセラーとして活動している人も多くいます。
ただ事業を継続していくなら、フリーランスも「開業届」を提出するのがおすすめ。開業届提出により青色申告が可能になり、税金面でのメリットが大きいからです。
なお法人を設立する場合には以下のような手続きが必要となります。
- 会社の印鑑を作成する
- 定款を作成し、公証役場で認証してもらう
- 法務局で設立登記申請する
- 税務署・都道府県税事務所・市町村役場に「法人設立届出書」等を提出する
法人を設立する場合は、司法書士や行政書士に書類作成を依頼するのが一般的です。
各種許認可の手続き
業種によっては、開業時に各種の許認可(免許・許可・認可・登録・届出)が必要です。必要な許認可がないと営業できず、許認可なしで営業すると処罰される可能性もあります。
例えば飲食店なら、保健所で営業許可を取得し、店舗ごとに「食品衛生責任者資格」の取得者を配置します。店舗の設備や提供するサービスによっては消防署や警察署での手続きも必要です。
このように同じ「飲食店」でも、店舗規模・設備・営業時間等によって必要な許認可が変わりますので、ケースに合わせて漏れのないよう手続きしてください。
不明点があれば起業支援に詳しい行政書士や、商工会議所の創業支援窓口などに相談もできます。
法人口座・クレジットカードの申込み
開業前に事業用の銀行口座とクレジットカードも作成しておきましょう。
個人事業主の場合には「プライベート用の銀行口座やクレジットカードをそのまま使えばいいのでは」と考える方もいます。ただ事業用とプライベート用の支出がごちゃまぜになっていると、経費等の管理が難しくなり、記帳も面倒に。
そのため事業用に銀行口座・クレジットカードを新しく作るのがおすすめ。
なお開業したばかりの個人事業主ですと「収入が不安定」と見なされ、クレジットカードの審査に落ちる可能性があります。会社員を辞める前に申し込んでおくほうが通りやすいです。
備品・設備を準備する
店舗やオフィスの準備としては、以下のようなものがあります。
- 店舗デザインの決定・施工
- 商品調達
- 通信環境の整備
- ライフラインの利用開始手続き
- 設備購入
順に説明していきますが、「店舗を構えない」など業種・業態によっては不要な工程もありますので、不要な部分は読み飛ばしてください。
店舗・オフィスのデザインを決めて施工
内装業者等と相談しながら店舗・オフィスのイメージやデザインを決め、施工します。
コンセプトを伝えるためにも店舗デザインは重要なので、十分に相談しながら進めましょう。看板や店舗ロゴも、内装とマッチしたものが作成できるといいですね。
設備や内装が残されている居抜き物件の場合でも、「床材や壁紙の張り替え」「照明器具の交換」などは可能です。
仕入先を見つけ商品調達する
提供するサービスに合わせた仕入先を見つけ、商品調達を行います。また飲食店であればメニュー開発も必要です。
店舗デザイン同様に、最初に決めたコンプトから逸脱しないように進めましょう。
通信環境を整備する
固定電話・FAX・インターネット(Wi-Fi)などの通信環境の整備も必要。
電話については「開業当初は携帯電話でもいいか」と考える方もいます。
ただ固定電話番号のほうがクライアントや来店客からの信頼感に繋がりやすいので、できれば固定電話を引くことをおすすめします。固定電話を引けばFAXを使えるというメリットもあります。
法人用の銀行口座を開設する際は固定電話番号が必要なので、その時にも役立ちます。
また開業時にWi-Fiを導入する店舗も多いです。店舗にWi-Fiを導入するメリットは以下のとおりです。
- 来店客数が増える(Wi-Fiの有無でお店を選ぶ人も多い)
- 従業員の満足度が高まる(休憩時間に使える)
- 決済端末がネットにつながりオペレーションが良くなる
ネットワークを業務用と来店客用に分けられるWi-Fiならセキュリティ面も安心です。
電気・ガスの利用開始手続き
電気など、店舗・オフィスに必要なライフラインの利用開始手続きも行います。飲食店や美容室など火やお湯を使う店舗なら、ガスの手続きも必要ですね。
なお新規開業にあたり、光熱費がオトクになる新電力・新ガスを選ぶオフィス・店舗も増えています。
新電力・新ガスと契約すれば、必要経費を無理なく節約できるからです。光熱費が高くなることが予想されるなら、新電力・新ガスを検討してはいかがでしょうか。
各種設備の購入・レンタル・設置
上記で紹介した準備のほかにも、店舗・オフィスごとに「開業時に必要な設備」「あると便利な設備」があります。例えば以下のような設備を準備しましょう。
ビジネスフォン | 「内線」「転送」機能などが使えるビジネス向けの電話機。 複数人で勤務しており固定電話を使う機会が多いオフィスにおすすめ。 |
防犯カメラ | 店舗・オフィスの防犯対策や、オペレーション確認に使える。 |
ウォーターサーバー | 従業員の福利厚生や、来客用としておすすめ。 飲食店・サロンなどの店舗で、来店客においしくて清潔な水を迅速に提供できる。 熱湯をお湯割りの提供等に使用している店舗も。 |
節水コマ | 蛇口にとりつけることで、水道代の削減に繋がる。 飲食店や宿泊施設の節水アイテムとしておすすめ。 |
開業資金はどれくらい必要?
準備しておくべき開業資金は、ケースにより異なります。業種のほか店舗の坪数・設備・立地などによって、必要な金額が変わるからです。
この章では「開業時に準備する資金の種類」「業種別の開業資金の目安」「資金調達の方法」について紹介します。
準備する費用は5種類
開業にかかる費用は、主に以下の5種類です。
- 物件にかかる費用
- 設備の購入・レンタルにかかる費用
- 宣伝・販促費用
- 開業前の仕入れ代金
- 当面の運転資金
なおこれらの費用については会計上の「開業費」とは必ずしも一致しません。
費用の概要と「費用を抑える方法」について解説します。
物件にかかる費用
新規開業にあたりテナントを借りる場合、家賃・敷金・礼金や内装のリフォーム費用がかかります。
自宅兼オフィス・店舗とする場合でも、何らかのリフォーム工事が必要になるケースはあるでしょう。
立地や坪数によっては、かなり大きな出費になる可能性があります。
設備にかかる費用
店舗・オフィスに設置する設備を準備するための費用もかかります。
オフィスならパソコン・電話・FAX複合機・机と椅子などを準備しなくてはいけません。金庫・棚・応接セットが必要になる業種もあります。
店舗だとキッチン・テーブルや椅子(飲食店)、鏡と椅子・シャンプー台・パーマ用機器(美容室)などが必要ですね。
設備が取り払われたあとの「スケルトン物件」だと、設備を全て自分で用意するため、多くの費用がかかります。
ただ設備をリース・レンタルで準備すれば、初期費用は低く抑えられます。
宣伝・販促にかかる費用
効率的に新規クライアントや来店客を集めるには、宣伝・広告が欠かせません。
サービスやお店の宣伝・広告には、以下のような費用がかかります。
- WEBサイト・チラシのデザイン費用
- 広告掲載費用
最近では簡単にチラシがデザインできる無料ツールもあるので、費用を抑えるなら外注せず自分でデザインするのもいいでしょう。またFacebookページを公式サイト代わりに使っている店舗もあります。
仕入れ代金
飲食店や小売店では開業に向け食材や商品を仕入れる必要があり、仕入れ代金がかかります。
美容室やサロンでも、店舗販売用のヘアケア用品やコスメを仕入れるでしょう。
ただネットショップでは、在庫を持たずに商品が売れてから仕入れる「ドロップシッピング」を使う方法もあります。
雑貨店などでオリジナル商品を作る場合は、製造資金が必要です。
当面の運転資金
当面の運転資金も必要です。開業してもすぐに経営が軌道に乗るとは限らないからですね。
売上があっても締め日の関係で、実際に現金が入ってくるまでにタイムラグが発生するケースも。
「現金不足で支払いできない」といったトラブルがないよう、開業時には最低でも当面3ヶ月の支払いに充てられる運転資金を準備しておくと安心です。
500万円未満で開業したケースが多い
日本政策金融公庫の調査によると、2021年度の新規開業費用の平均は941万円でした。ただこれは平均であり、500万円未満で開業しているケースが42.1%と最も多くなっています。
(参考:日本政策金融公庫「2021年度新規開業実態調査」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_201119_1.pdf)
また業種によっても相場は異なります。業種ごとに新規開業費用の相場を紹介します。
- カフェ:400万円~1,500万円
- 美容室:1,000万円
- エステサロン:200~1,000万円
- 医院・クリニック:1,500万円~15,000万円
- 歯科医院:5,000~7,000万円
立地・事業規模・使用する機材などにより金額は前後しますので、あくまで目安と考えてください。
例えばクリニックの開業では、高価な医療機器が必要な診療科かどうかで費用が変わってきます。エステでも、手技のみか機器を使うのかによって必要金額が変わります。
資金調達方法は「融資」か「補助金・助成金」
店舗・オフィスを借りたり設備を揃えたりする場合、開業資金を全て自己資金で準備するのは難しいものです。
自己資金が足りない場合、以下の方法が考えられます。
- 金融機関や自治体から融資を受ける
- 国や自治体の補助金・助成金を申請する
融資を受けるなら、各金融機関等に問い合わせて必要書類などを準備しましょう。「日本政策金融公庫」や各自治体による融資は、金利などが比較的低く設定されています。
また条件を満たせば国や自治体が設けている「補助金・助成金」を利用できます。融資とは異なり返済不要なので、利用可能ならぜひ活用しましょう。
各補助金・助成金により申請できる条件が異なりますので、「起業したいエリアの自治体のWEBサイト」または独立行政法人中小企業基盤整備機構の「J-Net21」で詳細をチェックしてください。
開業準備を一括で手配できるサービスはないの?
開業準備はやることがとても多く大変です。ずっと思い描いてきた夢のためとはいえ「開業準備が大変すぎる」「もっとラクにしたい」と感じる人も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、外部のサポートを利用すること。経営者が力を割くべき「コンセプト決定」や「事業計画の立案」に集中するためです。
例えば官公庁に提出する書類の作成については、起業支援に詳しい行政書士等に相談できます。
そして開業時の設備や備品の準備についても、一括で手配できる窓口があります。
ここでご紹介する窓口なら、店舗やオフィスの開業に必要な以下の設備・備品がまとめて準備可能。
- 電話番号・FAX番号取得
- インターネット導入(Wi-Fi含む)
- 電気・ガスの利用開始
- 複合機のリースまたはレンタル
- ウォーターサーバーの導入
開業準備で忙しい中、「電気は電力会社、ガスはガス会社、ネットは通信事業者に」とそれぞれ連絡するのは煩わしいもの。一括で手配すれば、時間も労力も節約できます。
まとめ
開業準備には大きく分けて「計画の作成」「官公庁等で行う各種手続き」「備品・設備の準備」があります。
事業を成功させるのに大切なのは事業計画の作成なので、起業を決意したら商圏調査などを怠らず、計画を練り上げましょう。
開業にあたり必要な手続きや資金の額は、業種や提供するサービスにより異なります。不明点があれば、商工会議所や行政書士などに相談しつつ進めるのが確実です。
備品・設備の準備については、一括で手配できるサービスがあるので、上手に活用して労力を減らすのがおすすめ。
重要度が低い煩雑な準備を外部に任せることで、計画立案など経営の肝になる部分に集中できます。