仮設工事とは？工事の種類・項目・費用や注意点について解説

建設現場で欠かせない「仮設工事」とは、工事をスムーズかつ安全に進めるために設置される、一時的な設備や作業のことです。

仮設足場や仮設トイレ、仮設電気・水道などが整備されることで、作業員が安全かつ快適に作業できる環境が確保されます。

本記事では、仮設工事の種類や主な項目、費用の相場、実施時の注意点について詳しく解説します。仮設工事の役割を理解し、効率的で安全な施工を実現しましょう。

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仮設工事とは？

仮設工事とは、建設現場での作業を円滑かつ安全に進めるために、一時的に設置される設備や構造物のことを指します。

例えば、作業員が高所作業を行うための足場や、現場で使用する電気や水道、トイレ、事務所などが該当します。

これらの設備は、建物や道路を直接つくるためのものではなく、あくまで工事の進行を支える役割を担います。そのため、建設工事が完了すると撤去され、元の状態に戻されます。

仮設工事の適切な計画と設置することは、作業の安全性や効率に大きく関わるため、建設業において非常に重要な工程のひとつです。

仮設工事の種類は「直接仮設工事」と「共通仮設工事」

仮設工事は、目的や役割によって「直接仮設工事」と「共通仮設工事」に分類されます。それぞれの概要は以下の通りです。

種類	詳細	代表例
直接仮設工事	建物の建設作業そのものに関わる仮設設備や作業	仮設足場、養生、墨出しなど
共通仮設工事	建物の建設に直接関与しない設備や作業	仮設トイレ、現場事務所など

ここでは、両者の違いや具体的な工事内容について解説します。

直接仮設工事とは？

直接仮設工事とは、建物の建設作業そのものに関わる仮設設備や作業を指します。

工事現場で安全かつ効率的に作業を進めるために不可欠で、主な例として以下のようなものがあります。

• 仮設足場：高所作業を安全に行うために設置
• 養生：工事の影響から周囲の環境を保護するための措置
• 墨出し：建設現場に施工基準となる線を表示し、建物の精度を確保する作業

直接仮設工事は、安全で正確な建築作業を進めるために欠かせません。適切に計画・施工することで、工事全体の品質や作業効率が向上します。

共通仮設工事とは？

共通仮設工事とは、工事を円滑に進めるために必要な設備や作業のことを指します。

建物の建設そのものには直接関与しませんが、安全で効率的な作業環境を整えるために欠かせません。主な例は以下の通りです。

• 仮設トイレ：作業員の利便性向上のために設置
• 現場事務所：工事の管理や打ち合わせ、休憩スペースとして活用
• 仮設電気・水道：工事に必要な電力や水の供給設備

このように、共通仮設工事は作業環境の安全性や快適性を確保し、工事全体の効率を高める重要な役割を担っています。

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仮設工事の主な項目と内容

仮設工事にはさまざまな項目があり、工事の種類や規模に応じて必要な設備が異なります。主な項目は以下の通りです。

• 水盛・遣り方
• 仮設トイレ
• 仮設電気
• 仮設水道
• 現場事務所
• 仮設足場
• 仮設ネット・仮囲い
• 養生
• 墨出し
• 廃材の処分
• 整理整頓
• 資材運搬
• 警備

順番に解説します。

水盛・遣り方

水盛・遣り方は、建物の正確な位置や高さを決定するための重要な作業です。それぞれの作業内容は以下の通りです。

水盛	水平面の基準を測定する作業
遣り方（やりかた）	杭や貫板を用いて建物の外周を示す作業

この作業が正確でないと、建物の施工にトラブルが生じる可能性があります。例えば、基礎の位置がずれると、建物全体が傾く危険性があるため、慎重に測定しなければいけません。

最近ではレーザー測定器を活用し、より精度の高い測定が可能になっています。

 仮設トイレ

仮設トイレは、工事現場で作業員が使用するために設置されるトイレです。

特に長期的な工事や大規模な現場では、作業員が近くの公衆トイレを利用することが難しいため、仮設トイレの設置が不可欠です。

近年では、国土交通省が推奨する水洗式の洋式トイレが標準化されつつあり、衛生環境の向上に加え、作業員の健康管理や快適な労働環境の確保が求められています。

仮設電気

仮設電気は、工事現場で必要な電力を一時的に供給するための設備です。新築現場では電気が通っていないことが多く、電動工具を使用するためには仮設電気工事が必要です。

一般的には電力会社から電気を引き込みますが、短期工事や山間部などの特定の条件下では発電機を使用する場合もあります。

仮設電気の工事には事前の申請や契約が必要であり、手続きに数週間かかることもあるため、早めに準備を進めることが重要です。

仮設水道

仮設水道は、工事現場で水を供給するために設置される一時的な水道設備です。基礎工事や清掃作業などで水が必要になるため、工事が始まる前に準備されます。

水道が整備されていない現場では、給水タンクを設置するケースもあります。また、汚水の処理設備も同時に準備し、環境への配慮を行うことが大切です。

水の供給が不足すると作業に遅れが生じるため、事前の計画と適切な管理が求められます。

現場事務所

現場事務所は、工事の管理や作業員の休憩スペースとして設置される仮設の事務所です。プレハブ式の事務所が一般的で、工事の進行状況を管理し、作業員との連携を図る役割を果たします。

また、事務所内には会議スペースや図面保管エリアが設けられることが多く、工事の計画や調整に活用されます。

仮設足場

仮設足場は、高所作業を安全に行うために設置される構造物です。建物の外壁や屋根の工事を行う際に必要で、作業員が安全に作業できるように設計されています。

枠組み足場、単管足場、吊り足場など、現場の状況に応じて適切な種類が選ばれ、足場の設置は専門の業者が行い、工事が終わると撤去されます。

仮設ネット・仮囲い

仮設ネットや仮囲いは、工事現場の安全対策として欠かせない設備です。工事現場の周囲を囲むことで、近隣への粉塵や騒音の飛散を防ぐ役割を果たします。

工事中に発生するチリやほこりを抑えるために使用され、近隣住民への配慮として不可欠です。また、無関係な人の立ち入りを防ぐための安全対策としても機能します。

仮囲いには、防音シートや防犯カメラを併設することもあるなど、現場の環境に応じて適切な対策を講じることが大切です。

養生

養生は、建物や周囲の環境を保護するために行われます。新築の場合は、仕上げ材が汚れたり、ダメージを受けたりしないように保護する目的で設置されます。

例えば、工事中に発生する粉塵や落下物から周囲を守るために、シートやネットを使用します。また、解体作業時には防音シートを取り付け、周囲への影響を最小限に抑えることも養生の一環です。

内部の床や壁の養生も重要であり、キズや汚れを防ぐために適切な材料を使用することが求められます。

墨出し

墨出しは、工事中に使用する位置や線を壁や床に表示する作業で、施工図に基づいて正確な位置を示すために行われます。墨出しは工事の基準となるため、非常に重要な作業であり、正確に行われなければなりません。

従来は墨つぼを使用していましたが、現在ではレーザー測定器を活用し、より高精度な測定が可能になっています。建築の品質を左右する工程のため、一般的には専門の技術者が担当します。

廃材の処分

廃材の処分は、建設工事で発生する廃棄物を適切に処理する作業で、種類ごとに分別して処分する必要があります。廃材処理は法律で規定されており、適切な処理を行わないと厳しい罰則が科されることも。

特に、コンクリートや木材、金属などは適切にリサイクルされるべき資源として扱われるため、専門の業者への処分依頼が一般的です。

また、違法な投棄は環境への悪影響を及ぼし、企業の信頼を損なう要因にもなるため注意が必要です。

整理整頓

整理整頓は、工事現場の作業環境を整えるための重要な作業で、作業を安全かつ効率的に進めるために欠かせないものです。現場が整理されていないと、作業効率が低下し事故の原因にもなりかねません。

道具や資材の配置を適切に管理することで、作業の無駄を減らし、スムーズな工事の進行が可能になります。また、工事が終了した後には美装工事を行い、引き渡しに向けた清掃作業を徹底することも必要です。

工事現場では「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」を推奨する、5S活動と呼ばれる取り組みを行っている場所もあります。

資材運搬

資材運搬は、建設現場に必要な資材や重機を運ぶ作業で、特に大型の資材や重機を運搬する際には、慎重な計画と適切な方法の選択が求められます。

高層ビルの建設現場では、エレベーターが使用できない場合、クレーンやホイスト（※）を活用して資材を搬入しなければなりません。

また、狭い路地に面した現場では、トラックの駐車スペースを確保し、近隣住民への影響を最小限に抑える工夫が必要です。効率的な搬入計画を立てることで、コスト削減や工期の短縮につながります。

（※）チェーンなどを使って重いものを垂直に上げ下げする機材

警備

工事現場の警備は、安全管理と防犯の両面で非常に重要です。工事現場には高価な資材や工具が多数存在するため、盗難のリスクが常に伴います。

また、不審者の侵入や近隣住民とのトラブルを防ぐためにも、警備体制をしっかりと整えることが必要です。

一般的な警備対策としては、警備員の配置や防犯カメラの設置が挙げられます。特に大規模な工事現場では、24時間体制での警備が求められることもあります。

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仮設工事の費用相場と予算の立て方

仮設工事の費用は、一般的に工事全体の3～5%程度が相場とされています。

具体的には、住宅の新築やリフォームにおいては、仮設工事費用が一戸あたり約15～20万円程度になることが多いです。

しかし、工事の規模が大きくなるとコストも増加し、マンションの大規模修繕工事では、仮設工事費が工事全体の約20%を占めるケースもあります。

仮設工事の予算を立てる際は、

• どの項目にどれだけの費用がかかるのかを把握する
• 予算オーバーを防ぐための見積もりを精査する

といったポイントを意識しましょう。

また、仮設工事は工事の進行に大きく影響を与えるため、コストだけでなく、安全性や作業効率を考慮して適切な業者を選ぶことが重要です。

仮設工事の施工期間の目安

仮設工事の施工期間は、工事の種類や規模によって異なりますが、工事の開始前に設置され、工事が完了した後に撤去されるのが一般的です。

工事の種類	仮設工事の期間
一般住宅の新築	1〜2週間
リフォーム工事	数日〜1週間
マンションの大規模修繕	数週間〜1ヵ月以上
商業施設の建設	1ヵ月以上

特に高層建築や複雑な設計の建物では、足場の組み立てにより多くの時間がかかるため、事前の計画が重要です。

仮設工事を実施する際の注意点

仮設工事を計画・実施する際には、事前に押さえておくべきポイントがいくつかあります。具体的には、以下の3点です。

• 傾斜地や3階建て以上の足場は割高になる
• 見積書を詳細に確認する
• 美装工事は仮設工事と別で計上する

順番に解説します。

傾斜地や3階建て以上の足場は割高になる

傾斜地や3階建て以上の建物では、足場の設置が難しくなるため、その分費用が高くなる傾向があります。

通常の平坦な敷地と比較して、足場の組み立てに手間がかかり、安定性を確保するために追加の資材や補強作業が必要になるからです。

特に3階建て以上の建物では、足場の強度を高めるための補強が求められ、安全対策のために手すりや落下防止ネットを設置しなければなりません。

そのため、材料費や人件費が増加し、1㎡あたりの足場費用が2階建ての建物よりも200〜300円程度高くなることが一般的です。このような追加コストを見込んで、事前に予算計画を立てておくことが重要です。

見積書を詳細に確認する

仮設工事の見積書は、施工内容や費用を正確に把握するために詳細に確認する必要があります。特に、仮設工事費用が見積もり総額にどのように含まれているのかをチェックすることが重要です。

業者によっては、仮設工事費用を「一式」として記載している場合がありますが、その内訳が明確でないと、後から追加費用が発生する可能性があります。

また、見積書の項目によっては、仮設工事が本体工事費に含まれているケースもあるため、どの項目にどの費用が含まれているのかをしっかりと確認することが大切です。

美装工事は仮設工事と別で計上する

美装工事（仕上げ工事）は、仮設工事とは別に計上されることが一般的です。

項目	役割	費用相場
仮設工事	工事を円滑に進めるための設備設置	工事全体の3〜5%
美装工事	仕上げ・清掃などの最終作業	1㎡あたり500〜1,000円

特にマンションやオフィスビルの場合、美装工事費用は100万円以上になることも多いです。仮設工事と美装工事の費用を明確に分けておくことで、予算管理がしやすくなり、見積もりの不明点を解消できます。

仮設工事についてよくある質問

仮設工事に関しては、さまざまな疑問が寄せられます。ここでは、仮設工事に関するよくある質問とその回答を紹介します。

仮設工事の業者や施工会社はどうやって選ぶ？

仮設工事の業者や施工会社を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

項目	確認内容
施工実績	これまでにどのような仮設工事を行ってきたかを確認し、同様の工事経験が豊富な業者を選ぶ
見積もりの内容	「一式」ではなく、項目が細かく明記されているかを確認する
打ち合わせ時の対応	業者の担当者が親身に対応してくれるかどうか確認する
保険加入の有無	労災保険や賠償責任保険に加入しているか確認する

1社だけに見積りを取るのではなく、複数の業者に相談して比較検討しましょう。

仮設工事の費用を抑える方法は？

仮設工事の費用を抑えるためには、以下の方法が考えられます。

• 無足場工法の採用：

足場の設置が必要ない無足場工法を選択すると、足場の組み立て・解体の費用を削減できる。

• 複数の工事をまとめて実施：

足場を組んだ状態で塗装や防水工事などを同時に行うことで、足場の設置・撤去の回数を減らし、コストを抑えられる。

• 複数の業者に相見積もりを依頼する

少なくとも2〜3社の見積もりを比較することで、適正な価格を把握できる。

費用を抑える上で、「安全性が担保されているか」を忘れないようにしましょう。

書類の提出や近隣住民への説明はいつ行う？

仮設工事を行う際は、以下のようなスケジュールで事前の書類提出や近隣住民への説明を行います。

項目	実施時期
書類の提出	「足場の高さが10m以上で、工事の期間が60日以上の場合」は、工事開始の30日前までに所轄の労働基準監督署へ書類を提出
近隣住民への説明	工事開始の1週間～10日前までに、チラシ配布や口頭での説明を行う
警察や行政への連絡	歩道を占有するケースでは7日以上前に道路使用許可を申請

適切な時期に書類の提出や説明を行うと、トラブルを防げます。期日があるものに関しては、早めに提出するようにしましょう。

仮設工事の防犯・監視カメラはNTTにおまかせ

仮設工事とは、建設現場での作業を安全かつ円滑に進めるための一時的な設備や作業のことです。仮設工事には、仮設足場や電気・水道、トイレ、事務所などが含まれます。

また、工事を安全に進めるためには、防犯や盗難を予防する監視カメラの設置が欠かせません。建設現場の警備の一環として防犯カメラの導入を検討している方には、NTTが提供する「ギガらくカメラ」がおすすめです。

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