以前は多くの会社がFAXを利用していましたが、最近では利用企業が減ってきているように感じられます。また廃止論が取り沙汰されたこともあります。
そのため「起業や新事務所開設にあたり、FAXを用意する必要性を感じない」「不要では」と考える法人・個人事業主もいるでしょう。
しかしFAXには独自のメリットがあり、多くの業種で必要とされ、利用されています。
この記事では「FAXの必要性」や「どのような業種・用途で使われているか」について解説します。
FAXの用途は?FAXが必要となる業務を紹介
この章ではFAXが必要とされる場面や業種について解説します。
用途1:法人間のやりとり
FAXは会社間のやりとりに利用されます。
FAXを受信することはほとんどなくても、送信を求められるケースもあります。
例えば「契約書などの重要書類は、FAXか郵送で」という会社も多いです。
法人・個人事業主の間で、FAXのほうがメールよりも「信用性・信頼性が高い」と考えられていることが理由でしょう。
FAX送信のたびにコンビニに行くのは不便ですから、取引先がFAXを使っているなら、自社もFAXを導入しておく必要性が高いといえます。
用途2:顧客とのやりとり
FAXは法人と個人顧客とのやりとりでも利用されます。
年配の方を中心に、「メール・SNS・パソコン・スマホを利用できない人」もまだまだ多いからです。
また耳の不自由な方の場合、電話での問い合わせができずFAXが必要な場面もあるでしょう。
「夜間・営業時間外の書類提出や問い合わせ」といった使い方もされています。
用途3:行政機関とのやりとり
会社と行政機関とのやりとりでも、FAXがよく使われます。
「行政機関では個人のメールアドレスを持っていない職員がいる」「メール対応は不可」というケースも多いからです。
行政機関は多くの個人情報を扱っています。
そのためセキュリティ対策として「重要な書類はメールでやり取りしない」というルールを設けている自治体もあるのです。
用途4:報道機関へのプレスリリース
報道機関へのプレスリリース配信でも、FAXが必要とされています。
FAXでのプレスリリースには「メールより目につく」「ひと目(紙1枚)で情報が伝わり、読まれやすい」というメリットがあるからです。
忙しい記者たちは頻繁にメールチェックはできませんし、「メールが届いているのを見ても、件名で興味を惹かれなければ開封すらしない」というケースが多々あります。
そのためプレスリリースは報道各社と記者クラブにFAXで送る会社が多いです。もちろんメール送信も併用されます。
用途5:社員の勤怠管理
社員の勤怠管理でFAXを必要とする会社もあります。
派遣会社など「スタッフが会社以外の場所で就業している」という会社に多いですね。
「派遣スタッフが就業場所から派遣会社へ出勤簿をFAX送信する」という使い方がされています。
業務日報などの報告書をFAXで送る会社もあります。
FAX利用が多い業種
FAXは多くの業界で必要とされ、日常的に利用されています。
先ほど行政機関や報道関係の例は紹介しました。他にもFAXがよく利用されている業界がありますので、いくつか紹介します。
卸売業
卸売業では、注文書や在庫確認書のやりとりでFAXが頻繁に利用されています。
卸売業の顧客には小規模な店舗も多く、インターネットやメールを使った注文ができず、FAXが必要なケースも多いからです。
「店舗側が在庫確認書をFAXし、卸売業者が在庫数を記入して折り返しFAXする」といった使い方をよく目にします。
運輸・倉庫業
運輸業や倉庫業では、伝票類や依頼書のやりとりをFAXで行うのが一般的です。
「メールだと見落としたり、チェック漏れが起きる可能性がある」という理由があるようですね。
「取引先からFAXで送られてきた集荷依頼書をもとにドライバーに仕事を振り分け、倉庫にFAXする」といった使い方がされています。
倉庫では「紙に印字したものを見ながらピッキングや梱包を行ったほうが、ミスが少ない」という理由もあるようです。
不動産・建築・インテリア業
不動産業界では物件情報のやりとりなどにFAXが利用されます。
「不動産業者・大家さん・職人さんに、ITスキルの低い人が多い」「メールアドレスよりFAX番号を伝える方が早い」などの理由があるからです。
また窓口に来ているお客さんに物件情報を見せたい場合、他社からメールで物件情報を取り寄せると、印刷する手間が発生します。
しかしFAXなら、受信した紙をそのまま見せられるので時短かつラクです。
不動産・建築・家具・インテリア業界など「図面」のやりとりが発生する業界では、FAXは根強いニーズがあります。
医療機関・介護事業者
病院などの医療機関でも、FAXは日常的に使われています。
医療機関で使うパソコンやタブレットは、セキュリティ上の懸念から、基本的にインターネットには繋がっていません。
そのため書類のメール送信は一般的ではなく、FAXが使われます。
介護業界でもFAXを使っている会社・事業所が多数あります。
士業
行政書士などの士業でもFAXがよく使われます。
公証役場や入国管理局への連絡にFAXが必要だからです。
地域にもよりますが、行政書士会や支部からの連絡がFAXで来るところもあります。
社労士の場合も年金事務所等への連絡にFAXがあると便利ですし、不動産関連の仕事が多い司法書士もFAXは必要でしょう。
基本的に「行政機関や不動産業界と連絡するなら、FAXの必要性は高い」と言えそうです。
FAXにも種類がある!
一口にFAXといっても種類はさまざまです。
現在一般的に利用されているFAXの種類は、以下の3つです。
- 電話回線(アナログ電話、ひかり電話)を利用するFAX
- インターネットFAX
- FAX配信システム
この章ではそれぞれの「概要」「送受信方法」「コスト」などについて紹介します。
電話回線を利用するFAX
FAX機・複合機をアナログ回線や光回線などの「電話回線」に接続して利用するのが、いわゆる「一般的なFAX」です。
電話回線として使われる「アナログ回線(加入電話)」と「光回線(光電話)」の違いは以下のとおりです。
アナログ回線 (加入電話) |
・メタルケーブルで音声を伝える ・いわゆる「従来型の固定電話」 |
光回線 (光電話) |
・インターネット回線の光ファイバーケーブルで音声を伝える ・光電話を導入するとインターネット環境も整備できる |
一般的なFAXのFAX番号は、固定電話と同じ番号にもできますし、違う番号にもできます。
ただ「電話番号=FAX番号」だと、FAX受信中には電話が使えず、電話使用中にはFAXが使えません。
そのため法人・個人事業主では電話番号とFAX番号を別にするケースが一般的。家庭では電話番号とFAX番号を同じにしている人も多いです。
送受信方法
一般的なFAXでは「送りたい内容が印刷・手書きされた紙」をFAX機・複合機に読み取らせて送信します。受信する場合、通常は受信と同時に自動で印刷されます。
つまり送受信には基本的に紙が必要です。
ただしFAX機・複合機によっては、以下のような「ペーパーレス機能」がついています。
- パソコンで作成したファイルをそのまま送信できる(送信時に紙が不要)
- 受信FAXを自動印刷せず、ディスプレイで確認し必要なものだけ印刷できる
必要なFAXを印刷する場合も「送り状・送付状は省いて印刷できる」といったFAX機・複合機もあり、一般的なFAXでもペーパーレス対応は進んでいます。
コスト
一般的なFAXを利用するには「FAX機や複合機の購入費用」「通信時間に応じた電話回線の通話料(通信料)」などが必要です。
FAX受信時には通信料はかかりません。
なお受信したFAXをリースしている複合機で印刷する場合には、カウンター料金もかかります。
使えるFAX機
アナログ回線や光回線に繋いで使えるFAX機には、以下のようなものがあります。
- 家庭用FAX
- 家庭用複合機
- 業務用FAX複合機
簡単にFAX・複合機の選び方をまとめましたので、参考にしてください。
家庭用FAX機 (FAX付き電話機) |
・FAXの使用頻度が低い場合におすすめ ・自宅兼事務所や小規模店舗など ・省スペース |
家庭用FAX複合機 | ・FAXの使用頻度が低い場合におすすめ ・自宅兼事務所や小規模店舗など ・電話機能・コピー機能・プリンター機能がついている |
業務用小型FAX複合機 | ・FAXの使用頻度がやや高い場合におすすめ ・コピー機能やプリンター機能がついている ・卓上設置できるものもあり、比較的省スペース ・セットできる用紙が大型複合機に比べて少ない |
業務用大型FAX複合機 | ・FAXの使用頻度が高い場合におすすめ ・コピー機能やプリンター機能がついている ・高機能で頑丈 ・広めの設置スペースが必要 |
具体的な機種を検討する際には、印刷方式やペーパーレス機能の違いを比較しましょう。
複合機の選び方については、こちらの記事でより詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
インターネットFAX
インターネットFAXは、その名の通りインターネットを使ってFAXをやりとりするサービス。インターネットに繋がっているパソコンやスマートフォンを利用して、FAX送受信を行います。
クラウド上でFAXをやりとりするため、場所に関わらず送受信でき、FAX機や複合機は不要です。FAXのためだけに出社する必要がないのは、インターネットFAXを利用するメリットのひとつです。
インターネットFAXサービスには、以下のようなものがあります。
- eFax(イーファックス)
- jFax(ジェーファックス)
- メッセージプラス
- MOVFAX(モバックス)
サービスによって使い勝手(受信しかできない、スマホ専用など)やコストが異なるので、検討時には注意が必要です。
なおインターネットFAXを利用する際には、基本的に新たにインターネットFAX用のFAX番号を取得する必要があります。
サービスによって「050」から始まる番号になったり、地域ごとの市外局番から始まる番号が取得できたりします。
送受信方法
e-Faxの場合ですと、メールの宛先欄に相手先のFAX番号を入力してFAX送信します。
FAXを受信した場合は、FAX内容がPDF化されたファイルが添付されたメールが届きます。なお相手先はe-FaxのFAX番号に通常通り送信します。
ちなみにMOVFAXだとメールでのFAX送信のほか、インターネット上の送信画面にログインしての送信操作も可能です。
コスト
インターネットFAXを利用するには「インターネットFAXの初期費用」「月額利用料」「送受信料」などが必要です。
コスト面では、FAX機・複合機の購入費用が不要なのが大きなメリット。また「月○枚までは送受信無料」というサービスもあります。
インターネットFAXの月額利用料や送受信料はサービスによりまちまちですが、安ければ月額1,000円程度から利用可能です。
FAX配信システム
FAX配信システムは、名前のとおり「FAX配信のためのシステム」です。
業務システムと紐付けできる便利なものもあり、請求書の作成からFAX送信まで自動で行ってくれます。人の手による送信作業が不要になり、ミス削減にも繋がります。
その他「DMを複数顧客に送信する」など、FAXを大量に送信する場面に適しています。
代表的なFAX配信システムは、コクヨ株式会社の「@Tovas(あっととばす)」などです。
送信方法
インターネットFAXの仕組みを利用するFAX送信システムが多いですが、「パソコンを使ってFAX送信できる機能をもつFAX機・複合機」を使って送信するソフトもあります。
一般的な送信方法としては、まずExcelなどで作成した送付先リストをFAX配信システムにアップロードし、送付先を登録します。
続いて原稿データをアップロードすると、登録した送付先にFAXとして送信されます。
コスト
FAX配信システム導入・利用に必要なコストは、サービスによってさまざまです。
サービスにより「初期費用」「月額基本料」「配信料」「保守費用」などが必要となります。
なおFAX配信システムを導入することでコストメリットが出やすいのは、「同じ帳票・原稿を大量にFAX送信する必要がある会社」です。
FAXを導入するメリットは?
さまざまな業界でFAXが使われているのは、「慣習的に」というだけではなく、FAXならではのメリットがあるからです。
この章ではFAXのメリットや必要とされる理由について改めて確認してみます。
FAXは信頼性が高い
FAXには「イタズラが少なく、信頼性が高い」というメリットがあります。
マスコミ業界では、イタズラメールやイタズラ投稿への対策としてFAXを必要としているところが多いです。
イタズラが少ないのは、個人・家庭でのFAX利用者が少なくなってきていることも関係しているでしょう。
見てもらえる確率が高い
FAXはメールのように「知らないうちに迷惑メールフォルダに振り分けられていた」「たくさんの営業メールの中に埋もれていた」ということがありません。
基本的には受信すると同時に自動印刷され、多少なりとも相手に見てもらえます。
「ダイレクトメールFAXはちらっと見てすぐ捨てる」という人でも、ちらっとは見ているわけですから、会社名やサービス内容が頭の片隅に残る可能性があります。
興味を引く内容であれば、じっくりFAXを読んでもらえるでしょう。
開封率の高さから、FAXによるダイレクトメールも活発に行われています。
FAX番号があると信頼性がアップする
FAX番号があること自体が、取引先からの信頼に繋がります。
電話番号・メールアドレスに加えて、FAX番号を公式サイトや名刺に掲載できれば「しっかりした会社だ」という印象を与えられるからです。
FAXの利用が盛んな業種ならなおさら、FAXの有無で信頼性が変わるはずです。
緊急連絡用として使える
まれではありますが、メールサーバーの障害などでメールが使えなくなるケースもあります。
この場合、緊急の連絡手段としてFAXが利用可能です。
紙をそのまま送りたいときに必要
FAXでは紙に書かれている内容をそのまま相手に送れます。
日常的に紙でのやりとりが発生する場合には、「紙をスキャンしてPDF化し、メールに添付して送信する」よりも、FAXのほうが早いでしょう。
また手書きの絵や図で「メールや電話では伝わりにくい内容やニュアンスを直感的に伝えられる」というメリットもあります。
例えば印刷物の校正で「ラフや原稿に修正点を書き入れて、そのままFAXで送信する」といった使い方ですね。
「電話・口頭では伝わりにくいな」「メールで説明すると長文になるな」というときに便利です。
アクセシビリティの確保に貢献
FAXには、ITスキルの低い人(高齢者や子どもなど)でも利用しやすいというメリットもあります。
行政機関や年配の方を相手にする業種でFAXが必要とされるのは、そのためなのですね。
また「耳や言葉が不自由な人」や「日本語の読み書きはできるが、通話は自信がない外国人」など、電話利用が難しい人もFAXなら安心して利用できるのではないでしょうか。
幅広い層の「情報へのアクセシビリティ」を確保するためにも、FAXが必要とされているとわかります。
FAXにはメリットがあり必要としている人も多い
FAXの必要性に疑問を持つ人もいますし、「中央省庁でFAXを廃止しよう」「小学校の欠席連絡がFAXなのはおかしい」などと話題になったこともあります。
しかしFAXにはFAXならではのメリットがありますし、FAXを必要とする場面や人も多いです。
そのため即座に「FAXはもういらない」「FAXは誰にとっても不要なもの」とはなりません。
「FAXはすぐには廃止されない」「今後も必要性はあるだろう」と推測できます。
FAXを実際に導入するには?
FAXを導入する場合には「固定回線を引く」「インターネットFAXを使う」「FAX配信システムを使う」という3つの選択肢があります。
個人事業主・法人の方に選ばれているのは、どのFAXなのでしょうか。
法人・個人事業主が選ぶのは「ひかり電話」
インターネットFAXが普及してきていますが、個人事業主・法人の方に選ばれるのは現在でも「NTTで固定回線を引く」が多い印象です。
ただし「従来型のアナログ回線」ではなく、光回線(ひかり電話)が主流です。
アナログ回線は今後廃止予定ですので、NTTも「新規電話・FAX番号の取得はひかり電話で」とすすめています。
法人・個人事業主がFAXとしてひかり電話を選ぶ理由
個人事業主や法人がNTTのひかり電話を選ぶ理由としては、「インターネット環境が同時に整備できること」や「安心感」があると考えられます。
電話回線不要のインターネットFAXやFAX配信システムを導入するにしても、結局インターネット環境は必要です。
そのため法人・個人事業主の方は、電話回線としての役割もインターネット回線としての役割も果たすフレッツ光を選ぶケースが多いようです。
「インターネットとして光回線を引くなら、同時にひかり電話も導入したほうが効率的なのでは」と考えるのでしょう。
ひかり電話の利用料が月額550円(2022年1月時点。税込み)からとリーズナブルなことも後押しになっているかもしれません。
また自宅兼事務所で仕事する個人事業主の方であれば、「ひかり電話で複数の電話番号を取得でき、自宅用と仕事用の番号をわけられる」のもメリットです。
フレッツ光とひかり電話は「契約先がNTTである」という安心感もあります。
フレッツ光が選ばれる理由については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
FAXの導入方法
FAXを導入するには、それぞれの事業者に申し込みを行います。
ひかり電話でFAXを利用するなら、NTT東日本またはNTT西日本に直接申し込み可能です。
ただNTTの窓口は混み合っていることも多いですし、「NTTの担当者に聞かれた内容がわからなくて困る」というケースも。
電話番号取得やひかり電話・FAX導入をサポートしてくれる窓口もありますので、上手に利用しましょう。
インターネットFAXやFAX配信システムは、各サービスに直接申し込みます。インターネットから申し込んだり問い合わせできたりするサービスが多いですね。
インターネットFAXやFAX配信システムは機能や使い勝手がサービスごとにかなり違いますので、申し込み前にじっくりと比較検討が必要です。
まとめ:FAXはまだ廃止されない!FAXの必要性と導入方法
FAXは法人間や法人対個人の通信手段として、多くの業種で必要とされています。
「手書きした紙が簡単に送信できる」など、FAXならではのメリットもあり、簡単には廃止されないだろうとご説明しました。
なおFAXの種類としては主に「電話回線に繋いで使う一般的なFAX」「クラウド上でFAXを送受信するインターネットFAX」「FAX配信システム」があります。
このうち個人事業主・法人の方が選ぶのは、「一般的なFAX」が多い印象です。ただしアナログ回線は廃止予定なので、ひかり電話が選ばれています。
ひかり電話ならインターネット環境と電話回線が同時に整備できるメリットもあります。
これから新規でFAXの導入をお考えの方は、こちらの記事で「ひかり電話でのFAX番号の取得方法」について解説しています。ぜひ参考にしてみてください。